君がいなくなった後の世界で

「瑞希」

彼が私の名前を呼ぶ。

俯いていた顔を上げると、瞬は私を見つめていた。

でも、その瞳が切なげに揺れていることは遠くからでも分かった。

「俺だって、瑞希に会えなくて寂しいのは同じ気持ちなんだよ。本当は、今すぐにでも瑞希のところに駆け寄って抱きしめたいけど、この橋を渡ってしまった以上そっちの世界に戻ることができないんだ‥‥‥」

「だったら、私がこの橋を渡るよ」

そしたら、いつまでも一緒にいられる。

また笑い合える日がくる。

けど、それを瞬は拒んだ。

「ダメだよ。渡ったら絶対にダメ」

「どうして?」

そう尋ねると、彼の揺れる瞳から真剣な眼差しへと変わる。

「瑞希に生きてほしいから」

彼の口から放たれた言葉は、私の心に真っ直ぐ入った。

「瑞希が誰よりも寂しがり屋で泣き虫なのも知ってる。今も、俺のために泣いてしまうぐらい‥‥‥けど、それでも、瑞希には生きていて欲しいんだ。俺の分まで」

はっきりした口調で彼は言う。

「でも、私、瞬がいなきゃ頑張れないよ‥‥‥」

私は、瞬が思っているほどそんなに強くないから。

彼からの望みを叶えられそうにないのに‥‥‥
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