君がいなくなった後の世界で

「瑞希ならできるよ」

と、さっきとは一変して優しい声で話す彼。

「これまで、嫌なことたくさん乗り越えてきただろう? それは、瑞希の“頑張り”があったからなんだよ。ずっと、傍で見てきたから瑞希が努力家で何事にも一生懸命に取り組んできたこと知ってる。だから、俺がいない世界でも、瑞希なら大丈夫。きっと大丈夫」

彼が太鼓判を押す。

「だって、俺が愛した人だもん」

「‥‥‥!」

その瞬間、ボロボロと涙が溢れた。

私が瞬に『死なないで欲しかった』と願うと同時に、瞬も私に『生きてほしい』と強く願うのだ。

互いに好きだからこそ、相手を思い合うのだろう。

決まって、私にできることは1つしかない。

ーー瞬の願いを叶えること。

「‥‥‥私、頑張るよ」

不安は沢山あるけれど、そう覚悟を決めて涙をグッと拭った。

今まで、瞬は優しく涙を拭ってくれた。

でも、今は自分で涙を拭うしかないんだ。

きっと、これからも自分で拭わなければならないだろう。

瞬がいない世界は、とても冷たくて残酷な世界。

それでも、私は生きていくことを決めた。
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