レポート
現在6時56分。
あれから30分以上経ったが、2人は未だエレベーターの中にいた。
「てか、何で降りれないの?
何で、故障してんの?
てか、あんた何者?」
彼は魂が抜けた様に天井を眺めながら、矢継ぎ早にそんな失礼な質問をした。
もう提出は難しいと悟り、諦めの境地に入ったのである。
そんな彼の心情を察したのか、それとも粋な演出か、エレベーター内の電光がチカチカとなり出し、しまいには消えて非常灯だけが中を薄暗く照らす。
「降りれないのはあなたのせい。
故障は配電盤の誤作動。
他人の素性を知りたいなら、自分から名乗るのが常識。」
彼女の方も、このような事態になるとは思っておらず、やる気を失ったように膝を抱えて隅にうずくまっている。
そのせいか、彼の失礼な質問にもこうやって、ある程度のことは答えているわけだ。
「そっか。てか故障なら、もっと分かりやすく掲示とかしときゃ良いのに。」
「教務のメールで、今日は点検があるって通知が来てたでしょ。」
「そっかぁ。俺いつもメールとか見ないから。」