嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
終章
「礼さん。あの、私やっぱり愛人でもいいっていうか……それすら恐れ多い気がしてきました」

 御堂礼の本妻。いざ目の前に差し出されるとこの立場は想像以上に重い。丸代たちの住む離れに一室間借りさせてもらって、子供とひっそり暮らす。時々礼に会えたらそれで十分。身の丈に合っている。そんなふうに思えてきた。

「君はいつの時代の人間だ? 江戸の殿様じゃあるまいし、俺の妻は君ひとりで十分だ」

 礼の両親への挨拶を前にすっかり怖気づく美琴の不安な気持ちを、礼はいまいちわかってくれない。

(礼さんはよくても〜お父様とお母様はよくないはず!)

 ウジウジと悩んでいる間にからりと襖があいて、礼の両親が顔を見せた。

「あなたが美琴ちゃん? まぁ〜勝司さんに目元がよく似てるわね!」
「うむ。勝司さんの娘さんなら安心だな。ところで、礼。かわいい孫の性別はまだわからないのか?」

 さすがは礼の両親だけあって美男美女だ。ふたりともとてもお上品。でも……美琴は戸惑いを隠せない。

(えっと……なんか普通っていうか普通すぎない? 御堂流の家元ご夫妻とは思えないんですけど)

 あまりの気さくさに美琴は拍子抜けしていた。

「この前あきづきから買わせていただいた富士子先生の訪問着、素敵だったわ〜。あの色は茶器に映えるのよね」
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