嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「御堂さんなら結婚したい女性はいくらでもいると思いますけど」
「俺と結婚したい女はいるだろうが、俺が結婚したい女はいない」

 彼でなければとても言えない台詞だろう。美琴は呆れて、開いた口が塞がらない。

「跡継ぎは必要だが、女は嫌いだ。必要ない」
「なんでそんなに女性を嫌うんですか? 私も一応女なので、いい気はしないんですけど」

 美琴は礼を睨みつけてやった。名家の人間だからって男尊女卑思考なんだろうか。
 礼は苦虫をかみつぶしたような顔でぼそりと言う。

「女は俺を札束だと思ってる。それが不快だ」
「なんですか、それ」

 美琴は思わずふきだしてしまった。なんだか少し、彼がかわいく見えたのだ。

「それはこじらせすぎですよ、御堂さん。御堂さん自身を見てくれる女性も絶対にいますから」
「いない」
「いますって」
「いない」

(なんて頑固な……)

「そうやって、心を閉ざしているから相手も心を開いてくれないんですよ。心は相手に伝わるんです」
「よく意味がわからないな」
「着物もね、どんなに古いものでも主人に大切に扱われていれば輝きは増していくんです。決して古びたりしません。でも、高級な新品でも主人が雑に扱っていると途端に魅力がなくなります」
「なるほど。それは少しわかる。茶道にも通ずるものがあるな」
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