嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 美琴はにっこりと微笑んだ。

「人間もきっと同じですよ。まずは自分から愛を伝えていかないと」
「それは君の実体験か? そういう相手がいるのか」
「へ? それはその……」

 美琴は口ごもった。自分から愛を伝えたこともなければ、相手から伝えてもらったこともない。
 
(いや、ないこともないよね! 同じ幼稚園のケンちゃんは私のこと好きって言ってくれたし)

 幼稚園まで遡らないと出てこないのが情けないといえば情けないが。

「なんだ、いないのか。えらそうなことを言ったくせに」
「うっ……と、とにかく! 明日からでも出会う女性に心を開いてみてください。そしたら跡継ぎ問題はすぐに解決しますよ」
「なるほどな」

 礼は自身の顎を撫でながら、こくりとうなずいた。意外と素直なその姿に、美琴はふっと微笑んだ。

「御堂さんはちょっと変わり者だけど、私のこと二度も助けてくれたし優しい人ですよね。きっと素敵な方と結婚できますよ」

 蔵を覗いていた不審者だったのに転びそうなところを助けてくれたし、今日だって自ら膝の手当てをしてくれた。案外面倒見がいいというか、困っている人間をほうっておけない性格なのだろう。

「優しいなんて初めて言われたな。人を助けたのも君が初めてだ」
「そうなんですか? 優しい御堂さん、素敵だと思うのでこれからはたくさん人助けしてみてください!」
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