嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 けれど、そんな浮かれた気持ちもいざパーティー会場に着くと途端にしぼんだ。

「えーっと……私、本当にここに入るんですか?」

 テレビで見たことのある政治家にIT社長、有名な歌舞伎役者とその奥さんである大御所女優もいる。さすがは篠宮家主催のパーティーだ。政財界から芸能関係者まで、錚々たる顔ぶれだった。

(馬子にも衣装でなんとかなるかと思ってたけど、やっぱり場違いなんてもんじゃないよ〜)

 どう見ても庶民は美琴だけだ。

「そんなに緊張する必要はない。見かけだけは立派だが、中身は空っぽな奴も案外多いぞ」

 礼にエスコートされて美琴は渋々会場に足を踏み入れた。すれ違う人がみんな礼に声をかけてくる。

(ふわー。やっぱりVIPなんだなぁ)

 なにより礼はこういう華やかな場がよく似合う。

「今のおじさんは誰ですか? なんか見たことあるような……」
「与党の大物政治家。御堂の遠縁なんだ」
「そうなんですか!?」
「篠宮家とも姻戚関係にあるしな。こういう世界は案外狭いんだ」
「へぇ」

 美琴は会場の女性陣に視線をうつす。ゴージャスなドレスや着物をさらりと着こなす美女ばかりだ。若い女性も結構多い。

(礼さんの妻になるのは、きっとこういう人たちなのね)

 



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