嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「ふぅ」

 姿見の前で美琴は大きなため息をつく。ようやく帝光ホテルから帰宅し、振袖を脱ぐところだった。
 慣れないゴージャスなパーティーと、ジェットコースターのように揺れ動く自身の感情のせいで、身体も心もぐったりと疲れ切っている。
 帯に手をかけた美琴は、鏡に映る自分のお腹をまじまじと眺めた。

(もし妊娠したら……そしたら、このおかしな関係は終わりになる。元の日常に戻れば、礼さんのことも忘れられるかな)

 これ以上彼のそばにいるのは危険だ。美琴の本能がそう告げていた。立ち直れないくらいにボロボロになってしまうかもしれない。若葉マークの自分が恋をしていい相手ではなかったのだ。

「疲れたか?」

 後ろの襖が開いて、礼が顔をのぞかせた。美琴は正直に答える。

「そりゃあもう。私にとっては異世界を旅するようなものですもん」
「ははっ。俺は君をエスコートできて、なかなか楽しかったけどな」

 礼はゆっくりと美琴のそばまで歩いてくると、背後からぎゅっと強く抱きしめた。

「着替え、手伝ってやろうか」

 言いながら、美琴の帯をするりと解いた。

「んっ」

 首筋に甘い刺激が走る。胸元に差し入れられた手が焦らすように美琴の肌をすべっていく。
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