嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 礼のハレの日にぴったり合わせたかのように、御堂家の庭の紅葉は美しく色づいていた。せっかくなので美琴も着物を着たかったけど、お腹のことを考えて今日はオフホワイトのワンピースを選んだ。
 茶会で亭主をつとめた礼は凛々しく本当に素敵で、美琴まで誇らしいような気持ちになった。
 茶会の後は青空の下でガーデンパーティーが開かれた。

「パパかっこよかったねー」

 美琴はお腹の赤ちゃんにそう話しかける。すると、ポコっとお腹の中から反応があった。

「わっ。いまのが噂の胎動? えへへ、パパがかっこよすぎて赤ちゃんも興奮したのかなぁ」
「美琴ちゃーん!」

 美琴が初めての胎動を喜んでいると、丸代が手を振りながらこちらに駆けてきた。

「よかったわ。元気そうで。こんなに早く里帰りしちゃうなんて寂しい」

 礼は屋敷の人間には、美琴は少しの間里帰りをするとだけ伝えたようだ。

「礼さんも目に見えて元気がなくてね〜早く帰ってきてあげてね」

 美琴と丸代が談笑しているところに、まっすぐに向かってくる人物がいた。それは礼ではなく……。

「まりえさん」
「この家から出て行ったと噂で聞いたけど、未練がましくまた来たわけ?」

 まりえは憎々しげに美琴を睨みつける。

「身の程知らずはやめなさいと忠告してあげたのに。今日はね、私の両親も来ているの」
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