嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 礼が美琴を優しく抱きかかえたのだ。
彼は怒りを隠そうともしない表情でまりえを見据えた。

「いますぐ俺の視界から消えてくれ。でないと、自分がなにをするかわからない」
「礼! なにがあったんだ? その子は?」

 礼を追いかけて、美男美女の上品な夫婦がこちらへやってきた。茶会で挨拶をしていた礼の両親だ。礼は彼らに向き直る。

「俺の妻と子供です。お客様にも後日改めて紹介しますので、今日は失礼させてください」

 礼は呆然としている両親を残して、丸代に指示を出した。

「丸。すぐに車を! それからかかりつけの産婦人科にも連絡を頼む」
「は、はい!」

 病院へと向かう車のなかで、美琴のお腹はズキズキと強い痛みでなにかを訴えかけてきた。

「礼さん。どうしよう、お腹が。赤ちゃんが」

 美琴はパニックにおちいりかけ、言葉がうまく紡げない。そんな美琴の手を礼はぎゅっと強く握った。

「心配するな。なにがあっても、君とお腹の子は俺が守る。そう約束したろ」
「はい」

 いまは礼のその言葉を信じるしかない。

(大丈夫、この子は絶対に大丈夫)

 美琴は呪文のようにそう唱え続けた。

 でも、美琴のお腹はズキズキと強い痛みを
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