嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「少し張りがありますが、赤ちゃんは元気ですし心拍も異常ないのでそう心配ないですよ」

 医師のその言葉に、美琴も礼も全身からどっと力が抜けた。涙ぐむ美琴を礼が優しく抱きしめる。

「張りどめの薬を飲んで様子を見ましょう。腰の打撲も結構ひどいし、今夜は入院してくださいね」
「僕も付き添っていいでしょうか」

 礼の言葉に医師はうなずく。

「個室なので構わないですよ。奥さんを安心させてあげてくださいね」

(奥さんって……)

 美琴はアワアワしてしまったけれど、礼はまったく動じることなく「はい」と答えた。
 医師が去るとすぐに礼は言った。

「篠宮とは完全に縁を切る。二度と君には近づけない」
「私も、もしこの子になにかあったら一生まりえさんを許せなかったと思います。でもこうして無事だったから」
「たとえ君が許せても、俺は無理だ。生まれて初めて心から愛した女を傷つけられたんだからな」

 その言葉に美琴の頬は赤く染まった。上目遣いに礼を見つめて言う。

「礼さん。さっき、みんなの前で私のことを妻って」
「君の気持ちも尊重すべきだと一度はひいたが、やっぱり諦められない。君を愛してる。君のいない未来はもう考えられないんだ」


 



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