嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
 ゆっくりと重なる唇。心が通じ合ってからの初めてのキス。痺れるように甘くて、心も身体も満たされていく。礼のキスは次第に深くなり、舌が絡み合う音が静かな病室に艶かしく響いた。胸元に差し入れられた彼の手に、美琴は思わず声をあげる。

「やっ、んっ」
「そんな声を聞かされると、止まらなくなる」

 礼の手はどんどん過激になっていく。長い指先が焦らすように美琴を煽る。

「はぁ。もう、ダメ……ですってば」
「なにがダメなんだ?」

 礼は美琴の制止も聞かず、また強引に唇を重ねた。彼の熱に押し流されそうになるのを、美琴はなんとかこらえた。

「ここ、病院です! それに赤ちゃんだって」

 美琴がお腹に視線を落とすと、礼もぴたりと動きを止めた。

「病院はともかく、子供を持ち出されると……折れるしかないな」

 礼は残念そうに苦笑しながら、美琴のお腹にそっと手をあてた。

「ママをひとり占めしてる君が羨ましい。早く元気に産まれてきて、美琴を俺に返してくれ」

 美琴はぷっとふきだしてしまった。

「産まれてきたら、もっと赤ちゃんにかかりきりですよ」

 それを聞いた礼は眉根を寄せて、うーんとうなった。

「たしかに。じゃあ、早く大きくなってもらわないとな」
「はい。楽しみですね」

 男の子だろうか、女の子だろうか。どちらにしても、礼とこの子と歩む未来はキラキラと輝いているに違いない。
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