消えない傷・消えない痛み
**母・里子
学校の事務の先生から
「潤天堂大学病院からお電話です。」
と、連絡を貰い出てみると
暖が倒れて運ばれたとか
教頭先生に連絡をして
病院へと向かう。
暖が検査されているベンチに
綺麗な女の子が座っていた。
心配そうな顔をしている
女の子と挨拶をかわす。
暖が言っていた
仲良しの子だった。
「暖の着替えとかを取りに行くつもり」
と、言うと、
「お母さんが帰ってくるまで居ます。」
と、言ってくれる優しい子だ。
暖の着替えや自分の着替えを
とりあえず持ち
病院へと戻り
美桜ちゃんを帰す。
暖の病名は······
すい臓がんのステージ4だった。
若い暖は、進行も早いと
主治医の先生に言われた。
もちろん、暖は知っていて
薬を服用しているらしい。
心配かけまいとしているのだろう
私に話さないのは······
だが·······
なぜ····なぜ····
この子····なのか·····と
思わずにはいられない······
美桜ちゃんの前では
泣くわけにはいかないと
思っていたが
涙が溢れる。
暖·····暖······
変われるものなら
変わってあげたい
「·····かあ···さん·····?··ごめ····ん··」
私は、首をふりながら
暖を見ると
「ごめん···心配···かけたく···なくて···」
「うんうん。」
「本当····に、親不孝····で···ごめんっ···」
「バカだね。
暖は、とっても優しくて
私の自慢の子だよ。
暖の思うように生きなさい。」
「ありがとう····っ···かあ··さん·····」
と、そう言うと
疲れてしまったのか眠ってしまった。
どれだけ、つらかったのだろう。
どれだけ、悲しんだのだろう。
どれだけ······
暖が一番辛いんだから
私が泣いては、いけない
と、歯を食い縛り我慢するが
溢れ出す····涙·····
翌日、暖は薬を変えて貰い
退院となった。
暖と話しあって
暖のマンションで
階違いに住むことにした。
一緒に住む方が安心だが
気を使われたくないと
暖が言うから。
私の通う学校にも
割りと近いし
暖の勤務しる北郷大学病院へも
潤天堂大学病院へも
近いと言うこともあり
私は、今後の暖の治療費も
考えて家を売ることに決めた。
暖には、言うつもりは
ないが。
知り合いの不動産屋さんに
連絡すると早急に動いて
売却が決まり
電化製品と夫の位牌は
マンションへと運んだ。
2DKの部屋にしたから
余裕があった。
暖とは必ず
朝と夜には、
連絡をとることを約束した。
仕事も減らす方向で
病院側に相談する事を
約束してくれた。