消えない傷・消えない痛み
**通夜そして葬儀
暖は、意識が戻ってから
一日、二日は、問題なかった。
このままなら様子をみて
「一度、帰宅しようか。」
と、高木先生から言われて
暖と二人で喜びあった。
だが、三日目に熱が出始めた。
·····その夜、熱がある中で
暖は、私にお願い事をした······
それから·····三日後·····
暖は·····
息を·····引き······取った········
美桜の悲しみは深かったが
お通夜、葬儀と気丈にふるまった。
お通夜には、暖の勤務している
北郷大学病院の先生と看護師、
スタッフの方々
暖の主治医である高木先生を
始め潤天堂大学病院の
先生方や看護師さん。
沢山の方に暖は見送って頂いた。
お通夜の日
「引けましたので
本日は、これで。」
と、斎場の方から伝えられた。
「はい。ありがとうございます。」
と、私が答えると
お義母さんも、一緒に頭を下げてくれた。
その時、コツコツと靴音がして·····
皆、一斉にそちらを向く······
·····い···お···り····
お義母さんが
「ありがとうございます。」
と、頭を下げると
「この度は·····」
と、挨拶をして
「高校からずっと一緒だった
甲斐 伊織と申します。
現在、アメリカの方に滞在して
おりまして、遅くなりました。」
「えっ、甲斐さん。
暖から聞いていました。
インターンの時も口添え頂いたみたいで
ありがとうございます。
その上、わざわざアメリカから
本当にありがとうございます。」
と、言っていた。
私は、お義母さんの横で
黙って聞いていたが
凛さんから、「大丈夫」
と、耳打ちされたから
頷くと
❬いおり!❭
と、女性が走ってきた。
❬マリーナ、車で待てと
言っただろう。❭
❬だって。❭
二人の話を皆待っていた。
すると係の人が
「どうぞ、こちらへ」
と、焼香へと案内をしてくれた。
お義母さんは、伊織とその女性と
一緒に行き説明をしていた。
私は、その後姿をボォッと見ていた。
伊織は、暖の顔を見ながら
お義母さんと話をし
女性(マリーナ)の方は
棺から離れた位置に立っていた
二人は、お焼香が済むと
私達の前に立ち
頭を下げた。
父を始め皆が頭を下げた。
伊織は、お義母さんに向かい
「宜しければ、火葬まで
出席させて頂いて宜しいですか?」
と、言った。
お義母さんは、
「暖も喜ぶと思います。」
と、言うと
「ありがとうございます。」
と、言い去って行った。
私は力が抜けて
ふらつき
凛さんが直ぐに支えてくれた。
皆から、少し休むように
言われてソファーへ座る。
「大丈夫?」
「うん、きっと。」
と、答える私を凛さんは、
じっと見ている
「クスッ、やはり、きちんと別れを
言われるに値もしない存在だと
いまさらながら、わかりました。
一度も目もあいませんでしたが····
それでも、暖に会いにきてくれて
暖も喜んでいますよね。」
「無理して笑わなくていいよ。
美桜が暖君を心から愛して
大切にしていたのはわかっている。
だけど、三年目も四年もなにも言わず
放置していて、なんなの、あの態度」
私の為に怒ってくれる凛さんに
本当にどれだけ助けられているか
「ありがとう、凛さん。」
と、言う私に
「バカっ。」
と、言って抱き締めてくれた。