消えない傷・消えない痛み

その夜は、眠らずに暖の
そばにいた。

「暖、伊織が来てくれたよ。
でも、一度も目もあわなかったよ
まあ、別れを言うにも値しない人と
目をあわす事はないか····クスッ。
暖、もう少し一緒に居たかった。
暖のあの笑顔を、もっと見たかった。
暖·····暖·····

私は、暖の棺の横で眠ってしまった
ようだ。

目が覚めた時
私の身体にはブランケットが
かけられていた。

皆もごそごそ起きて
身支度をしている。

11時から葬儀となる。
高木先生や凛さんも見えてくれた。
教授は、研究があるために
来れないと連絡を頂いた。
私がいないぶん一人でバタバタ
しているのではないかと
思い伝えると
自分の事より、暖君をきちんと
見送るように言われた。
本当に良い上司に巡り会えた。

そんな中で一際目立つ、伊織

私とは話す事も挨拶することもなく
お義母さんに挨拶をしていた。

葬儀も滞りなく終り
喪主の挨拶は、妻である私の仕事
私は、沢山の方々に見送られて
暖は幸せだと思います。
病気が発症してから
痛みもあったと思いますが
いつも笑顔で泣き事ひとつ
言わない暖を心配していましたが
そのおかけで、優しい笑顔の暖だけが
私の心にいつもおります。
暖らしい思いやりだと感謝しています。
本日は、お忙しいなか
夫、青葉 暖の為にお集まり
頂きましてありがとうございます。
と、頭を下げた。

暖は、そのまま火葬場へ。

空を見上げる。

暖、待っていてね。
少ししたら、行くからね

と、目を下に向けた時
回りが真っ暗になった。

「「美桜!!みゆ!」」
と、凛さんの声と·······
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