消えない傷・消えない痛み
**訃報
日本の同期からLINEが来た
『青葉が亡くなった。』と。
直ぐに連絡すると
癌だったらしいと。
通夜や葬儀の日時を教えてもらう。
❬いおり?❭
❬なに?❭
❬怖い顔してる?❭
❬友人が亡くなったから
明日調整して日本へ帰国する❭
❬一緒に行く。❭
❬必要ない。❭
翌日、病院で調整して
帰国する。
マリーナは付いて来た。
日本で記憶を取り戻してから
気づいたらアメリカに戻っていた
だが······
全てのやる気を失っていた
なんのために、この数年を
寝るまも惜しんでやって来たのか
なんのために、手技を磨いて
来たのか
まったく、わからなくなり
やる気を全て失くしてしまった。
一日、アルコール漬けになり
寝てるのか、起きているのかさえ
わからない状態を過ごしていた。
マリーナは、そんな俺を心配して
俺のそばにいた。
俺は、要らないと帰れと
何度も怒鳴ったような·····
だが、マリーナはずっとそばにいた。
ひと月、ふた月と過ぎて行く中
父親が日本からやってきて
殴られた。
そして、無理やり病院へと入れられ、
アルコールを抜いた。
それでも、騒ぎ暴れる俺に
俺の手術を待っている
小さな女の子を見せられた。
その子は、小さな身体で懸命に
生きていた。
その姿に俺は·····
父親は、
「なんのための手技なんだ。
一人でも多くの方を救え。」
と、言って帰って行った。
俺を無理矢理アパートメントから
引きずり出す父親に
マリーナは、歯向かって行ったらしいが
父親に一喝されたようだ。
俺が病院から戻った時に
涙を流して喜んでいた。
その日から
俺は、病院側にもお詫びをして
仕事へと戻してもらえた。
ただ、命を救う
それだけに生きていた。
もう、人に媚びをうる事も
優しさもいらない
そんな人間になっていた。
優しい気持ちがあるから
人は壊れるのだ
と、自分で思うようになった。
マリーナは、
また、俺のアパートメントにいる。
何度もいいないになる
だが、仕事に集中したい俺は、
「勝手にしろ」
と、言った。
「だが、愛することはない欲捌けに
利用するだけだ。それで良いなら。」
と、伝えた。
マリーナは、涙を流していたが
俺は、その姿を見ても
同情やかわいそうと
思う気持ちは、全くなかった。
仕事をやれる限り行い
命を救っていた。
その矢先の知らせだった。