消えない傷・消えない痛み

日本に帰国する件で
マリーナと言いあいになる
俺は、一人で動きたかったが
マリーナが引かずに
「絶対、一緒に行く。」
と、きかない。
なんど、遊びではないと
言ってもきかず。

飛行機の中でも
俺は、寝ていた。
ギリギリまで仕事をしていたからだ。

だから、一人の方が楽だったのに。

日本に到着して
そのままお通夜の斎条へと向かう
タクシーを待たせて
マリーナにもいるように言ったのに。

憔悴した美桜がいた。
美桜の姿を見て
怒りばかり浮かび
目を向けないようにした。
幸い暖の母親が
俺の対応をしてくれた。
その時にマリーナがやってきた
チッと思いながら
タクシーに戻るように
伝えるがきかず
斎条の方から焼香を言われた。

もう、今日はこれで閉めるのだろう。
みな、疲れた顔をしていた

俺は、暖のお母さんに
葬儀と火葬まで一緒に
させてほしいとお願いをすると
暖の母親は、喜んでくれた。

タクシーに戻り
マリーナをホテルでおろし
俺は実家に帰宅した。

その事は、アメリカを発つ時から
マリーナには話していた。

俺は父から帰るなら
「話がある」と、呼ばれていた。

帰宅すると父親から
「そろそろ日本へと戻ってこないか?」
と、言われた。
「手術の予定が決まっている
患者さんがいますので
あちらに帰り次第病院側と
話してみます。」
と、答えた。
俺もそろそろ····とは考えてはいた。
父は、
「すまないな。」
と、言い。
母親が
「お腹すいてないの?
お通夜は、あなたの同級生だったの
でしょう。」
と、話しかけてきて
「ああ、高校からの。」
と、言うと
母親は、悲しそうな顔をしてから
俺に簡単な日本食を用意してくれた。

マリーナからLINEが来ていたが
返事をすることもなく
俺は、日本の風呂でゆったり
過ごして横になると眠っていた。

翌日、葬儀に出席し
火葬まで出席させてもらった。

葬儀の最後
喪主の挨拶は、美桜が行った。
美桜の一言、一言にすすり泣きが
聞こえてきた。

涙を流しながら
前を向いて話す美桜
最後には······
とても優しい眼差しをして
一礼をした。

俺の事を忘れて
そんなに暖を愛したのか

いや·····もう、いい·····


暖の為に来たんだ。
暖の·····ため·····に
それ····だけ····だ····

俺に見切りをつけ
なにも言わずに去った。

非情な女だ。

忘れろ
忘れろ
忘れるんだ

自分に、そう言いきかせた。

暖と火葬へ向かう

最後のお別れをして
暖の母親に挨拶をして
その場から離れ外に出ると

少し先にいた
美桜の身体が····傾き·····

「美桜!!」
「みゆ!!」

何とか、間に合い
身体を支えた
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