消えない傷・消えない痛み
**どうすれば
あの男
甲斐 伊織が帰国して
自分の父親の病院と
潤天堂大学病院と
アメリカの病院を
掛け持ちして勤務していると
耳に入った。
まあ、どこの女性陣も
彼を落とそうと躍起になっていた。
だが、ひと月、ふた月を
過ぎると
彼は、冷徹、冷徹、気取りや
と、言いたい放題に
なっていた。
あの時に話して見たいと思ったが
いまは、美桜が大事な身体だから
避けようと思っていた
だが、彼が美桜を見る時の顔が·····
憎しみ?悲しみ?落胆?
愛しさ?
不可思議な顔をするのが
気になる。
そして最後には
吹っ切るような能面な顔をする。
それが、かえって
私の心をざわざわさせていた。
暖君を想い、暖君との赤ちゃんを
楽しみにしている美桜に
波風を立てない方が良い
そう思うが·····
悩んでいた。