消えない傷・消えない痛み

六話

＊＊手紙

俺は、暖の主治医だった
高木先生から呼ばれた。

「手がすいた時に連絡が欲しい。」と。

時間が出来たので
高木先生に連絡をして
先生の控え室へと出向く

「すまないね。
忙しいのに呼び出して。」
「いえ。先生には何かと
ご心配やご配慮頂きまして
帰国してすぐにご挨拶しなければ
行けなかったのですが。
申し訳ありません。」
「構わないよ。私のような内科医と
違い君は大活躍中の外科医だからね。」
と、言うと
先生は、自分の引き出しを鍵で開けて
一通の手紙を俺に差し出した。

俺は、受け取りながら
先生を見ると······

「青葉　暖からだよ。
自分が亡くなって一年後に
君に渡して欲しいと。
まあ、条件に
君が自分の通夜や葬儀に帰国して
くれて。
一年後に日本へ帰国していたら

これを伊織に渡して頂けませんか？
先生にしかお願いできません。とね。

君は、どちらもクリアしているから
暖君との約束を果たすよ。
それから、最後に
伊織が、この手紙を読むか、読まないかは
自由だけど。
伊織には、読まない選択はできない。
と、伝えて欲しいって。
最後の言葉は、私には理解出来ないが
君たち、二人には通じるのかな。」
と、言った。

暖が·····俺に········
ぐわいが、悪くなっても
連絡ひとつ、しなかったくせに·····
と、思いながら

「先生、すみませんでした。
ありがとうございます。」
と、高木先生に頭を下げて
先生の控え室を後にした。

読むか、読まないか
悩みながら自宅に帰り
自分の机の上に投げ置く

美桜との自慢だろうか
だが、暖はそんな奴ではない
なら、美桜を頼むか
あり得ない

俺は、
見ることも、廃棄することも
決めきらずにいた。