消えない傷・消えない痛み

**検査と退院


暖大は、痛みで泣く事もなく
翌日を向かえた。

朝、伊織に消毒をしてもらい
脳の検査をする。

看護師さんにネットとガーゼを
外された時に
泣きそうな顔をしていたが
伊織を見るとなぜか
ホッとした顔をした。

たんたんと笑顔を向けることなく
処置をする伊織。
病室は、静かだ。

「お母さん、終わりました。
脳の検査は、9時です。
また、お迎えにあがりますね。」
と、看護師さんに言われて
「はい。ありがとうございます。」
と、暖大を抱き上げながら
お礼を伝えると
暖大は、私に抱きついていた。

二人が病室からでると

「ひろ、頑張ったね。
     おりこうさん。」
と、抱き締めて背中をトントンと
すると、私の顔を見て
涙目でニッコリする。

暖大は、寝返りが面白いらしく
どこまでも動く。
言葉も、ア~ア、とか。だー、とか
話しをする。
母から離乳食をもらい
少しずつ食べるようになっていた。

帰ったら、片付けて広くしない
となぁ、と考える。

時間になり
看護師さんに連れられて
検査に向かう。

暖大は、少し眠る事に。

外で待つように言われて
外のベンチで待つ
父と母も心配して来ると言ったが
沢山でいても迷惑と思い
連絡するから
と、伝えた。

どのくらいたっただろう····か
暖大の泣き声が聞こえて
立ち上がると
暖大を抱いた伊織が現れた。

暖大の目に涙はあるが泣き止んでいて
私は、びっくりした。

暖大は、家族とお義母さん
凛さん以外に抱かれない
無理に抱いたり
近づくと顔がひきつる。

暖大は、伊織の顔を見て
私の顔を見て
ニッコリしている。

伊織は、少し困り顔をしていたから
「あっ、すみません。」と言い、
暖大に
「おいで。」
と、手を出すが
ニコニコして来ない
「ひろ」と、言うが·····

「甲斐先生が抱いたら
泣き止んだんですよ。
私でだめで。ショック」
と、看護師さん
「すみません。人見知りをする子で。」
と、言うと
「お母さん、冗談ですから。
あっ、甲斐先生が抱いたら
泣き止んだのは、本当ですよ。」
と、話しながら足は先に進む
「あの?先生、すみません。」
と、言うと
伊織は、私に暖大を渡そうと
すると······

みるみる間に·····
暖大がべそを·····
「ひろ、先生、お仕事だよ。」
と、言うと
伊織の顔を見た
伊織が頷くと
私を見て、手を出してきた
「ひろ、お利口さん。」
と、何時ものように伝えると
私の顔を見て涙目で
ニッコリする。

私は、自分の仕事の時に
暖大に伝えてからいく。

暖大も、仕事の意味がわからなくても
伝わる。

伊織も暖大の頭をポンと
してくれた。

今度は、看護師さんが
びっくりしていた。
ん?と思っていたが

私と暖大は、病室に戻り
結果がわかり次第
連絡が来る事に

看護師さんに送られて病室へ。

看護師さんが
「甲斐先生のあんな顔
初めて見ました。」
と、言われて
「あんな顔?」
と、言うと
「あの先生、腕は最高級です。
顔もイケメンですが
笑わない、冷徹、冷酷と
言われているのです。
もったいないですね。」
と、言われて
「·········そう···ですか。···」
と、答えるしかなかった。

私が嫌だから
あんな顔をしていると思うし
彼には、恋人?婚約者?妻?がいるから
他に靡く必要ないから
だと思う。

まあ、私は何も言わないが。

検査の結果は、問題なかった。

午後から退院する。

伊織に
「先生、ありがとうございました。」
と、言うと
「5日目に、もう一度傷を診ます。」
と、言われて
「はい。わかりました。」
と、頭を下げて
看護師さんにも頭を下げた。

暖大は、伊織に手を出すが
伊織は、暖大の頭を撫でて
立ち去った。

私は、病室に戻り
父と母、お義母さんに
LINEして。
凛さんにLINEをして。
会計を済ませて
荷物を持ち、教授の元に行き
急ぎがあれば少し仕事を
しようと思っていたが
大丈夫みたいだ。

教授も暖大も恐々としている。
だが、「ひろ、ママの仕事。」
と、言うと
「あ~あ」と、言う
わかるのかな、と思いながら
教授に挨拶をして帰宅した。
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