消えない傷・消えない痛み

**手紙


伊織 へ

俺の為に帰国してくれたんだな?
ありがとう。

お前の事だ。
きっと、納骨まで立ち会って
くれただろう。

元気な間に
一度だけでも会いたかった、伊織。
だが、お前の邪魔だけは
したくなかった。
伊織、お前の活躍は
嫌でも耳に入るからな。

今は、日本で医師をしているんだな
伊織の手を待っている人は
沢山いる。
一人でも多くの人を救ってくれ。

本当は、伊織なら俺の癌を
摘出できるかもしれないと
高木先生や教授に言われたんだ。
だが、俺の為に帰国してもらうより
一人でも多くの患者さんを
救って欲しかったから
お願いしなかった。

弱った俺を見られたく
なかったのかな⋅⋅⋅⋅⋅⋅

伊織、
お前は、俺の自慢の親友だった。

いまからも、多くの患者さんを
救って欲しい。

活躍して、活躍して
もういい、と思ったら
こっちにこいよ、

それまで、ブラブラして
待っている。

        青葉 暖
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