消えない傷・消えない痛み
**不可解
伊織へ
お前は今、毎日忙しい日々を
送っているのだろうな?
俺は⋅⋅⋅⋅⋅⋅
何をしているかな?
伊織
お前は、アメリカに渡った時
どんな気持ちだった?
沢山の優れた人達の中で
行き詰まったりしたんじゃないか?
息ができない程
のたうち回ったのではないか?
だが、負けず嫌いなお前だ
どんな風だったか
手に取るようにわかる
それは⋅⋅⋅⋅⋅嘘⋅⋅⋅⋅だな。
だがな、そうだったのは
お前だけか?
良く考えてみろ
お前だけが
辛く厳しい中にいたのか?
「そうだ」と、お前が
今、思っている⋅⋅⋅⋅なら⋅⋅⋅⋅⋅⋅
俺は、そうか
と、言うだけだ。
だけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅
なぁ、伊織
お前は、大切な事を
忘れていないか
暖
と、書いてあった。
何が、言いたい?
アメリカに渡り
本当に大変だった。
一言では、すまされない
沢山の優秀な人材の中で
俺は、下の下の位置にいた。
だが、大学の威信にかけても
逃げるわけにはいかない。
それに、自分自身も負けたくない
少しでも、技を身につけたい
少しでも、認められる人材に
なりたい
それからは、がむしゃらに勉強し、
見せてもらえる手術や
助手が出来る手術には
参加させてもらい
進んで入れてもらった
日本から学びに来ていると
言うことで大学側も無下に
出来ないのはわかっていたから
それを逆手に取った。
それの何がいけない
あれがあったから
今の俺がいるんだ。
今の俺があるのだ。
と、俺は思っていた。
そんな時に中庭を走り抜ける
美桜がみえた。
腕の中に沢山の書類を抱えている。
「あなたの本心は?」
と、言われて見上げると
美桜を目で追う、あの女性がいた。
「あなたは?」
と、訊ねると
「わたし?私は沢田 凛よ。
潤天堂大学で講師をしている。」
と、言われて
「沢田?」
「ああ~、沢田教授の娘。」
と、答えられて
美桜とは、沢田教授繋がりか
と、思っていると
「あなたは、食事をすることも
寝ることも、トイレに行く事も
ない人間だと思っていたわ。
そう、ロボットだと。
そう、ずっとそう思っていた。
だけど、ふと目にするあなたは⋅⋅⋅
人間のような。」
と、意味不明な事を言われて
「それは、どう言う意味ですか?」
と、訊ねたが
「言った通りよ。」
と、沢田講師は、言って
その場を離れた。
なんなんだ、どいつもこいつも
どんな意味があるんだ。
ロボット?俺が?