消えない傷・消えない痛み

**確認


俺は、翌日高木先生へ電話をした。

「おや、珍しい人から電話頂いて
嬉しいな。変わりない?」
と、穏和な先生の声に
「はい。お忙しい所
すみません。
あの、先生、あの二通の他に
暖から手紙を預かっていますか?」
と、訊ねると
「うん。預かっているよ。
君が、あの二通を見て
俺に訊ねてきたら
渡して欲しいと言われてる。」
と、言われて
高木先生の元に行き手紙を預かる。

その時に、高木先生から
「僕は、手紙の内容は、
全く知らされてないけど。
暖って、すごいな。
と、思っているよ。」
と、言われた。

まだ、あるのかもしれないが
それを訊ねても
教えては貰えないと思い
先生にお礼を言って
その場を離れた。

手紙は、ポケットにしまい
仕事にはいる。
今日は、午前中・潤天堂大学病院
午後からは、甲斐総合病院へ戻る。

難しい手術ではないが
全力でやる。
それだけは、変わらない
俺の信念だ。

今では、美桜に対しての
憎しみは薄れている
と、言うか
暖の手紙の内容が
把握出来ずにそちらが
頭を閉めている。

大学病院の仕事が終わり
戻る前に手紙を開く⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅

▪▪▪▪▪  ▪▪▪▪▪  ▪▪▪▪▪


伊織 へ

俺の言った意味が、わかった?
それともわからずに
高木先生の元へと行ったかな?

伊織、考えてもみろ
「待っていて欲しい。」
その言葉だけで
美桜は、三年以上
伊織を待った。

伊織からのLINEが
返事がなくても⋅⋅⋅⋅⋅
既読にもならなくても⋅⋅⋅⋅

遊びで行っているわけではない
と、自分に言い聞かせて。

だが⋅⋅⋅⋅⋅⋅

なぜ、連絡しなかった?

何でも、良かったんだ

おはよう、でも
お休み、でも

何にもない携帯をずっと
手離せずにいる人の気持ち
わかるか?
お前は、手術だ、勉強だ
と、忙しくしていたかもしれないが。

美桜が、どんな気持ちで
毎日、毎日を過ごしていたか

わからない⋅⋅⋅⋅だろうな⋅⋅⋅⋅⋅⋅

だから、俺は、
美桜の弱っている心に
漬け込んだんだ。

自分の気持ちは、決して
言わないと思っていたのに⋅⋅⋅⋅⋅⋅

お前が、美桜を大事に
しなかったから⋅⋅⋅⋅⋅

⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅ごめん⋅⋅⋅⋅⋅⋅言い訳だな。

でも、お前が、伊織が
美桜を大事にしないなら
悲しい思いさせるなら
俺の命あるかぎり
幸せにしたい
そう、思ったんだ。

俺が、死んだら
余計に辛くなるだろう美桜の
気持ちに気づかないふりをして。

伊織、女の三年、四年は長い
男と違って。
美桜に、
あの時、放置したことを
詫びてくれないか?

あいつの辛かった日々を⋅⋅⋅⋅⋅
計り知れない思いを⋅⋅⋅⋅⋅

勝手な事を言っているのは
わかっている。

あの時期の美桜の悲しみ辛さは、
俺には取り除いてやれないから。
頼む

PS 指輪は、美桜の最後の抵抗
だったんだ。


             暖

と、記載されていた。

えっ、ずっと暖とは
美桜が好きだったのか⋅⋅⋅⋅⋅

美桜は⋅⋅⋅⋅⋅⋅
指輪は⋅⋅⋅⋅⋅⋅

沢田講師のロボット⋅⋅⋅⋅⋅は
その⋅⋅⋅⋅意味か⋅⋅⋅⋅⋅

食事や寝るとき
トイレの時に⋅⋅⋅⋅やろうと思えば
できる事を
あえて、やらなかった⋅⋅⋅⋅のだ、と。
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