消えない傷・消えない痛み
**すれ違い
「暖君は、自分の病気の事は
美桜に話してなかった。
婚姻届も私もサインしたのに
提出してなくて。
美桜の両親に渡していたの
美桜の戸籍を汚したくないと
自分がいなくなっても
美桜には、笑顔をいて欲しいと。
自分の命と引き変えに
大好きな人の時間を貰うのだから、と。
亡くなる前に、倒れてね
その時に、美桜の両親から
その事を知らされたの。
美桜は、婚姻届を直ぐに提出して
神崎から青葉に変わったの。
暖君にしたら、あなたを想う美桜を
無理矢理、自分のそばに置いて
いたと思っていたからか
ずっと手も出さなかった。
まあ、亡くなる前に結ばれた
みたいだけど。
あなたは、お通夜の時の女性と
ずっと一緒にいたの?
美桜が一度かな、見かけたみたいだけど。
新しい人が出来たなら
言うべきではないの?
まあ、繋がりがLINEしかないのを
放置するくらいだから
言う必要はないと
思っていたのだろうね。」
と、私にハンカチを渡しながら
伊織に冷たく言う凛さん。
「アメリカに行き三年目に帰国の
話が上がり、最後のOPをやり
打ち上げをした帰りに
地下の階段で人にぶつかられて
気がついたら病院だった。
その時、記憶がなくなっていました。
両親のことも日本の事も。
その時、ぶつかったのが
マリーナだったのです。
マリーナは責任を感じて
身の回りの世話をする⋅⋅⋅⋅⋅と
何度も断りましたが。
だが、手術とかの知識には、
何ら影響なく
いらない情報は混乱を招くとなり
美桜が送った荷物は
母親が、黙って持ち帰っていたみたいで
知らなかった。
この間、アメリカからの荷物を
ほどいた時に隅からでてきました。
当時、父も大学側も心配して
一度、日本へと帰国しました。
マリーナは、心配してついてきました。
日本へ戻っても、何もわからなかった。
その時、美桜を見ました。
美桜だとわかったわけではなく
その女性が気になり目で追っていると
その女性が、男性と抱き合った。
その時、美桜と暖だと
思いだし。全てがクリアに
なりました。
だが、美桜の裏切りに
打ちのめされ自暴自棄の生活を
アメリカで過ごしていました。
俺が先にやったのに
勝手のよい話しですよね。
親父が日本からやってきて
殴られて病院に叩き込まれて
アルコールを抜かされ
日本へ戻る用に言われました。
マリーナとは、付き合っていた
わけではありませんが
日本へ帰国する事で
関係を終わらせましたが
暖の通夜の時には、ついてくると
何度言ってもきかずに
放置していました。」
と、話す伊織に
私達は、何度もすれ違っていたんだ。
「頭は、大丈夫なの?身体も。」
と、訊ねると
「問題ない。」
と、答える伊織。
「だけど、表情が乏しくなった?」
と、言う凛さんに
伊織は、はっとして凛さんを見る
私は、わからずに凛さんと
伊織を見比べる。
「彼は、記憶を戻した時の
美桜と暖君に。
美桜にだけかな
憎しみ、悲しみ、苦しみが向かった。
心が壊れた?うまく機能出来ない?
優しさや笑う?そんな感情を
出せない。そうでしょう?」
と、言うと
伊織は、「たぶん」
と、答えた。
美桜は、自分だけが苦しいと辛いと
思っていた。
だけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「ごめんなさい。
伊織から、言われないなら
自分からきちんと別れを言って
暖と向き合えば良かった。」
と、言うと
「それは、俺も同じだ。」
と、言いながら
封筒を三通渡した。
ん?と伊織を見るが。
何も言わないから
開いて見ると暖からだった。
凛さんも一緒に読む。
暖⋅⋅⋅⋅⋅⋅
暖君⋅⋅⋅⋅⋅⋅