消えない傷・消えない痛み

**動物園


父・徹
母・菊乃
義母・里子は、
三人で話をしていた。

徹は、大学時代に美桜が
「会って欲しい。」
と、言ってきたのを
まだ、早いと拒否した話しも、全て。

あの時·····
この時·····
と、話しても仕方ない·····

これからの三人を
見守って行こう、と。

それが、暖の願いでも
あるのではないかと、なった。

徹は、暖の優しさに
本当に頭が下がる思いだった。

だが·····

美桜の
伊織の
暖大の気持ちを大切にし
無理強いや否定をしないように
しようとも話した。

その後も
暖大の熱は上がらずに
伊織効果だと
みんな感心していた。

今週末は
伊織から
「出掛けないか?」
と、誘ってもらって
「三人に相談して
   返事をするね。」
と、伝えた。

相談すると
「行っておいで。」
と、言われて
伊織に返事をした。

伊織は、
「ひろが、大丈夫なら
動物園に行かないか?」と。
「ありがとう、喜ぶよ。」
と、電話で話した。

当日は、お弁当を作り
伊織が迎えにきてくれるのを待つ

暖大は、伊織の車がくると
手を叩いて喜んだ
両親は、見送りをしながら
「気をつけて。」と。

ひろは、伊織の車のジュニアシートに
座ってはしゃいでいた。

ベビーカーを持って行くが
荷物だけが乗り
本人は、歩いたり
伊織に抱かれたりだ。

きゃーっ、きゃーっ
言いながら、楽しんでいる暖大。
熱が続いていたのが
嘘のようだ。

伊織は、ずっと振り回されて
いるが大丈夫なのか心配になる。
昼食になり
お弁当を持って来ていると
言うと、心なしか嬉しそうに
してくれたから、良かったと
思った。

三人で木陰にシートをひいて
座りお昼にする。

暖大は、私を見たり伊織をみたり
お弁当をみたりして、はしゃいでいる。
「ひろ、ちゃんと食べるんだよ。」
「あい。」
と、伊織の横に座り
小皿に取って渡す。
伊織に手を拭いて貰い食べる。

伊織にも、お皿に取り渡す。
「ありがとう。」
と、言って取り口に運ぶ
少しだけ、口角があがり
「変わらない。」
と、言うから
「そう。美味しい?」
「ああ。」
「伊織、ありがとう。
でも、大丈夫?昨日も仕事遅かったみたい
だし。暖大の行動は、めちゃくちゃだから。
疲れてしまうよ。」
「ああ、大丈夫。
だけど、子供ってすごいんだな。」
「うふふっ、ほんとだよね。」
と、話していると
「ね。」
と、笑っているから
私も伊織も、笑ってしまう。

伊織は、くっ、って感じだが。
食べ終わり、私達は珈琲を
ひろは、ジュースを
飲んでいると·······

素敵な親子ね····の声の中

あの旦那さん、イケメンだけど
楽しくないのかな?
喧嘩中?
顔が、怖いんだけど
奥さん、大変そう

······等······など·····の······声に·····

「すまん。」
と、辛そうに言う伊織に
私は、首をふりながら
伊織を前から抱き締めて
見えないようにした。

伊織は、なにも悪くない。

私が前から抱き締めると
体に力が入る伊織。
あっ、嫌だったかと反省していると
ひろが、後ろから
ニコニコしながら
抱きついてきて
伊織の背中に頬をスリスリしている。

伊織の体から力が抜け
私を片手で抱き締め
背中のひろの足を撫でていた。

少しすると
「ありがとう。」
と、声に私は離れ
伊織の横に座ると
伊織の膝の上に
ひろが座る。
まるで守るみたいに。

わかるのかな?と
我が子が頼もしくみえた。
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