消えない傷・消えない痛み
**美桜
大学四年からいる研究室で
大学院に上がっても継続して
勉強した。
その研究室の教授・沢田教授から
院を出たら、ここに残って欲しいと
言って頂いた。
私は、沢田教授をとても
尊敬していたから
「喜んで。」と、即答をすると
教授は、大笑いをした。
教授の娘さんの凛さんとは、
仲良しなのだ。
凛さんは、この大学で講師をされていて
私より一つ年上。
沢田教授の研究室へ
入った時に
沢田教授の元に弁当を届けにきた
凛さんとお会いしてから
話し始めた。
それからは、食事をしたり
飲みに行ったりもする
たまには、教授の家にも
遊びに行ったりしていた。
凛さんは、綺麗だけど
性格は、さっぱりしていて
面白いし、とても優しくて
姉のような人だ。
沢田教授の事は、
教授としては尊敬しているが
いち社会人、いち家庭の父親としては
最低、最悪だという。
「だから、母親からも見捨てられたの」
と、笑いながら言う凛さんに
沢田教授は、ニコニコしている。
私は、二人とも大好きだ。
学生と社会人の違いに戸惑いながらも
楽しく、厳しく仕事をしている。
伊織とも連絡をとっているが
伊織は、忙しくしているようだ。
寂しいが、仕方ない。
暖も、一生懸命、勉強をしている
みたいだ。
頑張って欲しい。
だが······
一年、二年と過ぎる中
伊織との連絡は途絶えた。
一年目·····
返信は三回に一度····
五回に一度·····となり····
だんだんと無くなり·······
二年目に入ると
十回に···一度······
後·····には、
少しの間は····既読は···ついていたが····
その後は、既読にもならず·····
それでも·····
私は、LINEを送っていた····
段々と虚しくなっていた。
三年目になり
「美桜、もう、やめな。」
と、凛さん。
携帯を見るたびに
寂しそうな、泣きそうな顔をしている
私をずっと見てきたからだ。
「忙しいのも、わかってるし
遊びで行っているわけでもないのも
わかっているのですが
この二年、一度も日本へも
帰らない。
繋がっていたLINEも
既読さえならないのは
医師としても充実しているし
私生活も穏やかに暮らせてるのだろう
と、頭の中では、わかっているの。
だけど······」
と、泣く私を凛さんは、
ずっと、黙って側にいてくれた。
三年が過ぎても
伊織は帰国せず······
連絡もなかった。
私の中で····
もう、伊織との関係は終わったの
だと理解できた。
伊織から、もらってた
イヤリングやネックレスは、
クローゼットの奥底にしまい
アメリカに経つ前に
もらった指輪は·····
箱に戻して
アメリカの住所へ送った。
送ったら、思い出して
くれるかも·····
そんな浅はかな想いをだいている
自分が情けなかったが·····
伊織から、連絡がくる事は
なかった······
そんな日々の中
27才の時に····
暖から
「会いたい。」と、連絡があった。