消えない傷・消えない痛み
三話

**変わり行く


伊織は、当初計画の三年には
帰国しなかった。

連絡も、全くなく
私達の交際は、次へと繋がる想いも
伊織には、なくなったのだと·····

何度、泣いても
何度、悲しんでも
何度、苦しんでも
伊織には、届くことはなく
繋がらない携帯
返事のない携帯は
真っ黒のままだ······


美桜は、いたたまれずに
携帯を新しくした。

過去にとらわれないように
自分の中から伊織を
消し去りたかった


ここ一年、会えていなかった
暖から連絡があったのは
この時だった。

待ち合わせの場所に行くと
少し痩せた暖がいた。
「ごめん、待った?」
と、言う私に優しく微笑みながら
「ううん、今、きたよ。
俺の方こそ、呼び出してごめん。」
「ううん。それは、全然いいの。
それより、暖、無理してるんじゃない?」
「う~ん、仕事は楽しいのだけど。」
「けど?」
「話の前に、何か飲もうか?」
と、暖に言われて私達は、
二人で注文をしてから
お互いの近況を報告しあった。

「それで、伊織とはうまく行ってる?
あいつは、優秀だから
忙しくしてるんだろうな?
いつ帰国するんだ?」
と、私と伊織が続いていると思っている
暖。

そう言えば、暖に話してなかったなあ
と、思い
「う~んと、知らないの。
一度も帰って来なかったし
ああ、だけど、私には連絡はないけど
実家には帰っていたかもね。

最初の頃は、LINEの返事も
あったけど。何度かに一度だけどね。

段々と、LINEの返事の無くなり
後半は、全く、なくなって
既読にもならなかった。

遊びに行っているわけではないけど
医師としても、私生活も
充実しているから
私は必要ないんだと···ね。

だけど、私もバカだよね
最後の悪あがきみたいに
指輪をアメリカに送ったの
なんか、言ってくれるかな
なんて·····
でも····それも·····なかった·····

もう、伊織の中には
私はいないのだ
よくわかった。」
と、言う私に
暖は、びっくりしていたが
そっと、腕を伸ばして
私の涙を拭いてくれた。

ああ、まだ、涙が残っていたんだ。

私が泣き止むまで
暖は、黙って見守ってくれて
「美桜、でようか?」
と、言ってくれて
会計をすると
私の手を取りカフェを後にした。

少し歩いた所に公園があり
そこに、私達は腰かけた。
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