寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
一時しただろうか。

馬車は、大きな病院の前に来た。

「さあ、降りよう。」

小沢さんは再び母を抱きかかえると、馬車を降りた。

「坊ちゃま、先生はいますかね。」

「往診にも忙しい医者だからな。」

私は不安になった。

せっかく病院に来たのに、ちゃんとお医者様に診て貰えるの?


「あっ、いた!」

「三ツ木先生!」

白衣を着た年寄りのお医者様は、髭も白かった。

「なんだ、小沢の坊か。どうした。」

「この方を、診て頂きたいんです。」

小沢さんは、診察室の寝台に、母を寝かせた。

「うん。酷いな。直ぐに入院して、点滴と。あと栄養もだな。」

「お願いします。入院費は僕が払いますから。」

「坊が?」

お医者様は、私の方を見た。

「女か。素朴だな。」
< 11 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop