寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
「大丈夫?小花。」

私を抱き起してくれたのは、保さんだった。

「すまない。すっかり我が侭に育ててしまって。」

「いいえ。私もあげはさんと同じ立場なら、同じ事をしました。」

それを見た父は、目を瞑った。

「小花は、思いやりのある娘だ。保君、小花の事を宜しく頼むよ。」

「はい。」

そして父は立ち上がると、私を抱きしめてくれた。

「幸せに。後で保君の家に、着物を送ろう。」

「着物?」

「保君の元にいるのに、そんな恰好ではダメだからな。せめてもの贈り物だ。」

「ありがとう、お父さん。」

私もそっと、父を抱きしめた。


屋敷を出て、馬車に乗った私達は、保さんの屋敷に向かった。

「これで、小花をようやく僕のものにできるね。」

そっと伸ばされた手。

私は、その手を自分から握った。

それは、私が保さんに抱かれると、決意した瞬間だった。
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