寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
「僕は結婚しません。小花嬢だけで十分です。」

初めて聞いた保さんの決意。

でもそれは、お父様の鋭い眼光に消されてしまった。

「名門の小沢家の当主が、結婚もせずにいられるか。」

「小花嬢に子供ができれば、跡継ぎの問題は解決するでしょう。」

「妾の子と本妻の子では、身分が違う。強情を張るのもいい加減にしろ。」

保さんとお父様が、睨み合っているのを私は、オロオロと見ているだけだった。


「保さん。もう……」

「そうだな。もう行こう。」

保さんは立ち上がると、私の手を取って、書斎を出ようとした。

私は後ろを振り返って、お父様に頭を下げた。

後には、書斎の扉が意味なく閉まる音だけ。


「保さん。」

「どうした?」

「どうして保さんは、結婚なさらないの?」

すると保さんは、歩みを止めた。

「小花も、僕に結婚して欲しいのか?」

「えっ?」

「いや、何でもない。」
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