寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
父は、実は貴族で、この辺では偉い人で通っている。

だからこそ、母の事を隠したいのだ。

「だからってなぁ。いつまでも、嫁に出さない訳にはいかないからな。」

薬屋の主人は、私の事を親身になって、気遣ってくれていた。

でも時々思う。

そんなに、嫁に行く事が大事なのかって。

「じゃあ、私行くね。」

「ああ。また待ってるよ。」

私は薬屋を出ると、また大通りに出た。


たぶん、嫁入りの話をされたせいか、ボーっとしていたのかもしれない。

自分に危機が迫っているのも、気が付かなかった。

「危ない!」

その声に振り返った時には、大きな馬が私の上に迫ってきていた。

咄嗟に目を瞑って、その場にしゃがんだ。

轢かれる!

もしかして、私、死ぬかも!


周りがガヤガヤしてきた。

「おい、大丈夫か?」

誰かに肩を叩かれ、私の身体はビクついた。
< 3 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop