寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
さわかさんが屋敷から帰られて、私は自分の部屋に戻った。

客室を出る時、お父様にドレスを決めておくように言われた。

婚約パーティーの時に着るドレスだ。

保さんの婚約パーティー。

胸がくすぶる。


「小花。」

静かにドアが開いて、保さんが部屋の中に入って来た。

「今回の事はごめん。まさか、父がさわか嬢の相手をさせるなんて、思ってもみなくて。」

「さわかさん。私が妾だって、知っていたわ。」

あの冷静に微笑む顔が、怖かった。

「保さんみたいな方に、妾の1人や2人いてもおかしくないって。さわかさん、正妻としての腹積もりをされているんだわ。」

「……だとしても、僕はさわか嬢とは、結婚しない。」

私はそっと、保さんを見つめた。

「そうやって、誰とも結婚しないで、通せる世界なのかしら。」

「小花?」


何を言っているんだろう、私。

誰とも結婚しないって言われて、胸が痛くなっている。


「いっそ、さわかさんと結婚したら?お似合いだったし。」

その瞬間、壁を叩く音がした。
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