寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
「……ちよさんって、保さんの事、好きなのね。」

その瞬間、保さんはバーボンを吹きそうになった。

「大丈夫?」

「君は、突拍子もない事を言うんだな。」

私は保さんの背中を摩りながら、この様子だと、ちよさんの気持ちには気づいていなかったらしい。


「ちよさんは、いつからこの屋敷に?」

「僕が大学生の時だから、ここ7,8年と言ったところかな。」

「ちよさん、結婚しているの?」

「していないよ。ずっとここで、働いている。」

見たところ、ちよさんは保さんと同じくらいの歳だ。

知らずに恋していたなんて、保さんも罪な人だ。

「保さんの美しさには、困ったものね。」

「ん?」

バーボンを飲むこの姿を、ちよさんは見た事があるのかな。


「ちよさんに、手を出した事ある?」

「ある訳ないだろう。」

保さんは、首元のボタンを二つ外して広げ、足を組んだ。

「貴族の家に奉公に出る事は、身分の低い女性にとって、結婚する時のいい経歴になるんだよ。それがお手付きだと知られたら、結婚の話どころじゃなくなるだろう。」

「それはどうかしら。好きな人に手を付けられたら、女として幸せなんじゃないかしら。」
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