愛され王女は王の道をゆく
「おはようございます。姉上。今少しよろしいでしょうか?」

「構わないわ。入って頂戴」

「失礼します」


 アナスタシアを姉上と呼ぶこの男は、第一王妃の息子にして、第四王子のレオナルド・ヴァン・クウォール。

 アナスタシアと同じ髪を持つ弟だ。

 対象的なのは目の色くらいだろう。

 顔形は瓜二つで、幼少の頃であれば、見間違えられることもしばしばあった。


「朝からどうしたの?」


 幾ら血を分けた弟とは言え、こんな朝早くから女性の部屋を訪ねるのは、どちらかと言えば非常識だ。

 しかし、それだけレオナルドにも、外せない用事があるということだった。

 昨日、行われた王位継承にて、アナスタシアは次期国王として指名された。

 国王に指名された王族が最初にすることが、十二人で構成される《円卓の騎士》の選定だ。


「昨日の一件で、姉上にも護衛が必要になりました。私はいつでも姉上の味方ですから、しばらくは姉上の専属の護衛兼仲介役を担当しようかと思いまして」


 レオナルドは王位継承権が低いこともあり、元々、近衛騎士隊に属していた。

 そのため、剣の腕は王族でありながら、騎士団の隊長クラスと同格と言っていいほどのものだ。
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