旦那様は征服者~帝編~
「え?あの…」
「あれですよね?」
と私が取ろうとした商品を、指差す。

「あ、はい」
「はい、どうぞ?」
簡単に取って、渡された。
「すみません。ありがとうございました」
「フフ…いえ」
「え?あの…?」
「ごめんね…たまたま君が取ろうと背伸びしたりしてるのが目に入って、それが可愛くて…」
「見られてたんですね?恥ずかしい…」
「いえ、こちらこそ笑ってすみません。では!」
「あ、はい。ありがとうございました」
ペコッと頭を下げると、フワッと笑って去っていった。
その後会計をして、外に出た。

「うー。意外に重い。買いすぎた…」
家は駅近のタワーマンションなので、とても近い。だからちょっと買いすぎた。
先に銀行に行ってて良かった。
この状態で、銀行は辛い。
とにかく帰らなきゃ。もうすぐお昼だ。
お昼に一度帝に電話しなければいけない。
これも決まり事の一つだ。

「あれ?さっきの人…」
「え?あっ、さっきはありがとうございました」
先程のおつまみを取ってくれた人だ。
「大丈夫ですか?僕が運びましょうか?車で来てるなら、車まで」
と、さりげなく買い物袋を触られた。
「あ、いえ。歩きなので。近いし、大丈夫です」
私は咄嗟に、買い物袋を持った手を引っ込めた。
こんなの帝に知られたら、どんなお仕置きされるかわからない。
「ほんとに大丈夫ですから!失礼します」

そう言ってその場を去った。
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