夕ご飯を一緒に 〜イケメン腹黒課長の策略〜


 初めて会った時は、特になんとも思わなかった。
 あの人の代わりの人、という認識しかなかったのに。

 後ろから声をかけた時の、ビクッとする反応。
 その後、恐る恐る振り向いた顔。

 帰って行くあの人達を見送る、眩しそうな顔。
 その後の、何故か、遠い瞳。

 客先での、緊張しているらしいぎこちない笑顔。
 それでも、先方を気遣う会話。

『良かった……私で』
『もし本田さんだったら、大変……』

 立っていられない程の高熱の中、他人の心配をして、ホッとしてる顔。

 太一君と一緒にいる時の、リラックスした笑顔。


 彼女の表情一つ一つに、何故か惹きつけられる。

 この感覚は知っている。

 7年前の春、まだ入社したばかりの時に抱いた、淡い感情。
 気付いた時にはもう遅かった、多分、初恋。

 あの時と同じだ。
 また、他の誰かを大切に思っている人。
 
 でも、状況は違う。
 彼女が大切に思っている太一君は、自分も一緒に大切にできる。
 そして、彼はいずれ彼女の元を飛び立って行く。
 その時、彼女と一緒に見守る存在になりたい。



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