夕ご飯を一緒に 〜イケメン腹黒課長の策略〜


 マンションに着くと、もう荷物は運び込まれていた。久保田さんが、こっちでの引き取りをしてくれたのだった。
 私達が着いた時に、ちょうど運び終わったところだった。
「思ったより早かったですね」
 久保田さんは、爽やかな、でもプライベートの笑顔で迎えてくれた。
 ああ、この笑顔であと3年は頑張れる。
「引き取り、ありがとうございました。すみません、お休みの日なのに」
「荷解きも手伝いますよ」
「えっそんな」
「引っ越しには、男手は必要でしょう」
 久保田さんはにこやかに奥へ入っていく。
 太一と目が合うと、軽くため息をつかれた。
「いいんじゃない?ああ言ってるんだし」
「まあ……そうだけど……」
 人手があるのは助かるから、お言葉に甘えて手伝ってもらった。

 もともと荷物は少なめだったこともあり、日が暮れる頃にはなんとか日常生活ができるまでにはなった。
 太一は玄関脇6畳間の自分の部屋を片付けた後、久保田さんの手を借りながらキッチン周りを片付けていた。
 前に住んでいたご夫婦が食器棚を譲ってくださったので、そこに我が家の食器を入れていく。我が家の食器は大して多くないので、スカスカだった。冷蔵庫は、ちまっとした印象だ。
 リビングも、今まで使っていたラグマットとテーブル、座椅子にテレビと、3段のカラーボックスを一つ置いたらもう終わり。広々、というかやっぱりスカスカだ。
「引っ越ししたて感満載」
 呟いたら、久保田さんがふふっと笑った。
「そのうち馴染んできますよ」
 そうかな。そうだよね。
 これからは、ここが我が家になるんだし。

 とはいえ、前のアパートには10年以上住んでいたから、感覚的に慣れるのに大分時間がかかったのだった……。




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