夕ご飯を一緒に 〜イケメン腹黒課長の策略〜
月曜日、体は軽かった。
晴れているせいもあって、周りの物が色鮮やかにはっきり見える。
昨日のしょうが焼きのおかげだな、と思った。
快調に仕事を進めて、定時で上がる。
エレベーターを待っていたら、小田島さんが隣に立った。
「久保田が定時なんて珍しいな」
「小田島さんこそ定時なんて珍しいですね」
「今日実家なんだ」
「月曜日に?」
「週末ばっくれたら母親が怒った」
笑っちゃいけないとは思うけど、笑ってしまう。
仕事では常に冷静で頼りになる人なのに、どうして家族を怒らせるとわかっていることをしてしまうのか。
「テーブルにずらっと見合い写真並べられたら、逃げたくなるだろ?」
「あー……」
小田島さんは確か今年で38歳。親としては、心配なんだろう。
「母親を怒らせたままだと面倒だからって父親が。とりあえず顔出せってさ」
「……頑張ってください」
苦笑しながら言うと、小田島さんはにやっと笑った。
「久保田も頑張れよ」
「僕ですか?」
エレベーターを降りた小田島さんが、前方を指差す。
そこには、彼女の後姿があった。
「あれ以来、なんにもなかっただろ?意外とみんな心配してんだぞ」
「あれ以来って……」
「あの爆弾失恋旅行発言」
苦笑しか出てこない。