夕ご飯を一緒に 〜イケメン腹黒課長の策略〜
「もう大分前のことですよ」
「そうだけど」
小田島さんは、からかうように唇の端を上げる。
「ずっとこのまま仕事ばっかしてんのかと思ってたからさ」
そこで、小田島さんのスマホが震えた。
「ごめん、会社だ。先行って。まああれだ、頑張れよ。あっちは子育てで眼中無いみたいだけどな」
言い逃げだ。電話で話しながら、会社に戻って行ってしまった。
最後の一言は余計だ。わかってる、そんなこと。
彼女は常に母親で、常に太一君を一番に考える。
僕のことは、顔は好きなタイプらしいけど、それ以上ではないようだ。目の保養にしかなってないのがわかる。
だから、とにかく近くにいる。
寄り添って、何かあったら支えられるように。
彼女も、そして太一君も。
あのあったかさの中にいられるように。
願わくば、僕も一緒に。