夕ご飯を一緒に 〜イケメン腹黒課長の策略〜


 『好き』っていう言葉は、言った方がいいよね。
 気持ちは伝わってるみたいだけど、やっぱり言葉で言われると嬉しいし。
 私も嬉しかったし。腰が抜けそうになるほど。

 いつ言おう。
 いざ言おうとすると、言葉が出てこなくなる気がする。
 恥ずかしいし、照れてしまう。
 でも、ちゃんと言おう。
 同じ気持ちだって、知っててほしいから。



 お風呂から上がって、久保田さんにメッセージを送る。

 ーーー体調が良さそうなら、明日の夕ご飯はウチでいかがですか?

 返事はすぐに返ってきた。

 ーーー僕は是非お願いしたいけど。太一君は何か言ってた?

 ーーーちゃんと話しました。太一はいいそうです。久保田さんならいいって言ってました。

 ーーー良かった

 ーーーでも明日は土曜日なので、太一じゃなくて私が作るので、あまり期待しないでください。

 ーーー楽しみにしてる

 うっ、と一瞬詰まった。
 久保田さんが私のご飯を食べたのは、しょうが焼きの時だけ。あの時は確か、おいしいと言って食べてくれた。
 次は何を作ればいいんだろう。

 間が空いたら、久保田さんから続けてメッセージがきた。

 ーーー楽しみだな

 ーーーもうお腹空いた

 あっ、と思った。

 ーーーからかわないでください

 ーーーごめん

 ふう、とひと息つくと、またメッセージがくる。

 ーーーでも、本当に楽しみにしてるから

 胸が、大きく鳴った。

 ーーーがんばります

 焦ったおかげで漢字に変換できなかった。

 ーーーおやすみなさい

 ーーーおやすみ

 時計を見れば、もう10時半。
 太一を見たら、コントローラーを握りしめてうとうとしていた。
 半目で、口も半開き。他の人なら不気味だけど、我が子なら可愛い。
「太一、寝るなら布団行こう」
「んー……」
 のそのそと動き出す。
「歯磨きした?」
「した……」
「じゃあそのまま寝よう。はい、行くよ」
「んー……」
 腕を引っ張って、太一を促す。
 ふにゃふにゃな太一をなんとか布団に突っ込んで、電気を消して、私も自分の布団に入った。



 ーーーでも、本当に楽しみにしてるから

 ああ。
 明日、なに作ろう。

 『歩実』

 脳内再生される、久保田さんの声。

 『好きだよ』

 思い出したら、顔が熱くなった。

 キス、したよね。

 舞い上がっていて、夢みたいだったけど、体に残るあったかさは現実。夢じゃない。

 明日から、心臓がもつかな……。
 太一の前で、どんな顔すればいいんだろう。
 あっ美里ちゃんにどう報告するのかも考えなきゃ。

 いろいろ考えを巡らせながら、時々久保田さんの声を思い出したりして。
 眠りについたのは、夜も大分更けてからだった。


< 67 / 83 >

この作品をシェア

pagetop