夕ご飯を一緒に 〜イケメン腹黒課長の策略〜


 気にならないなんてことはない。
 本田さんが育児休暇から復帰して、また圭さんと一緒に働くようになったら。
 冷静でいられるだろうか。
 私は本田さんの代理だから、その時にはもうここにはいない。

 かつて、好きだった人。初めて好きになった人。
 何年も思い続けて、見守ってきた人。
 その思いは、叶わないとわかっているのに。





 『今、僕が好きなのは、歩実だよ』

 この言葉が本当だと、信じよう。
 そう思ったから、あれ以上は聞かなかった。
 聞いたら、圭さんの心に土足で踏み込んでしまう気がしたから。
 圭さんは、私が小田島さんと話したことは知らないはず。
 だから、圭さんが何も言わないなら、知らないままでいようと決めた。

 不安になったら、その時は正直に言おう。
 きっと、圭さんは受け止めてくれる。
 私の不安なんて、あの笑顔で溶かしてくれる。
 素直に信じられる。



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