朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
傷口に、ざわめく
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新卒で入社した総合広告代理店の仕事は、想像以上に「信頼」という名の重圧を感じながら進められるものなのだと、気づいたのはいつだったのか。
クライアントは、あまりにも多岐に渡る。
各案件ごとに依頼をまとめてコンペやプレゼン準備を同時進行でこなしながら、依頼主から多少の無茶を要求されても、それが長年取引実績のある大口顧客であればあるほど、こちらはなかなか「NO」とは言えない。
"御社なら出来ますよね"
"御社だからこそお願いしています"
そんな言葉が交わされる中で信頼関係を守っていくのは、対企業であればあるほど身動きが取りづらいのだと、日々感じていた。
それでも、クライアントの窓口でもある代理店の花形職の1つ、アカウントプランナー(アカプラ)になれたことは、嬉しかった。
営業職に近い仕事も多いアカプラだが、依頼主の抱える課題を解決できる広告をどのようなメディアで、どのようなターゲット層に向けて届けるのか。
広告主への企画力も相当試されるこの仕事は、当然初めから、凄く大変だった。
だけど、残業がどんなに多くても、生み出した企画が成果に結びついたと実感できれば、肉体的疲労より自分の中の充足感が勝った。
広告のスペースを確保するだけじゃない。
対象になる商品やサービスを正確にきちんとアピールするには市場の調査に加えて、クライアントへのヒアリングが重要な鍵を握る。
そしてそれは、やはり「信頼」が基盤になる。
その「信頼」を守るために、
私は、自分をどこまで殺せば良かったのだろう。