朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
貴方に、ときめく
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「…お、お邪魔、します。」
「どうぞ?」
とてつもなくぎこちない挨拶で玄関を入ると、揶揄うような口調の男が笑って促してくれた。
スリッパを拝借して進むのは、初めて足を踏み入れた空間だ。
今日、私は3年間勤めた会社へ退職届を提出した。
無職になってしまうことの怖さもあったけれど、もう自分に嘘をつくのは止めようと決めて。
憧れの人が、いつか認めてくれるようになるまでちゃんとアカウントプランナーの仕事を頑張って、そして、会いに行こうと、決意した筈だったのだけど。
「その?」
2ヶ月間、私がずっと世話をかけ過ぎてきたその人が、まさか迎えに来てくれるとは、思わなかった。
『お前以外のアシスタントは、要らない。』
真っ直ぐに、私だけを見つめて告げられた言葉を思い出すだけで、簡単に心臓が煩くなる。
廊下を経て辿り着いたリビングは、やはり事務所と同じようにシンプルだった。
無駄を出来る限り省いた最低限の家具が置かれた部屋は、やはりこの男らしい。
落ち着かなくてきょろきょろとしてしまう私の挙動の不審さに気づいた依織に名前を呼ばれたら、もっと胸がざわついた。
「…遠いんだけど。」
「き、気にしないで。」
「いやどういう意味?」
座れば?とソファに腰を下ろした男にそう言われて、恐る恐る端っこに座ったら不自然な間の空間に不満気な指摘を受けた。