朝戸風に、きらきら 4/4 番外編追加
「何これ。俺、距離置かれてんの。」
「…こ、心の距離と物理的な距離は
別に比例しませんからね。大丈夫です。」
「何が大丈夫だよ。
そして反比例でもねーだろ。」
びしっと反論されて押し黙ったら、伸びてきた手にぐいっと身体を引っ張られ、瞬く間に男との距離は、とてつもなく近付いた。
膝を折って器用に座る男の間にすっぽりと、身体を預けてしまったカタチだ。
「……な、那津さん。」
「此処、事務所じゃ無いですけど。」
「っ、分かってます。」
何故だか強がって答えたら、そのまま胸元により一層引き寄せられて、クスクスと愉しそうな音で笑う男のとても心地よい心音を頬で感じていた。
それだけで、何故だか泣きそうになるのはどうしてだろう。
「……いおり、」
「なに?」
「迎えに来てくれて、ありがと、」
頑張って、離れようとした。
心が嫌だと泣くのを知っていながら、それが最善だと思おうとした。
だけど私の本心は結局、この男を前にしたらスルスルと漏れ出してしまった。
『那津さんと、働きたいです。』
「俺の部下は、世話が焼ける。」
そんな風に言うくせに、あまりに優しく笑うからまた涙が出た。
それをすぐに察した男が、私の目尻に優しく唇を寄せる。