わかってるよ、どうせ
「良かったら、俺が清水さんと一緒に行きます」
服部くんの視線がゆっくりと動き、直江くんを捕らえる。
お互いに目を合わせても尚、直江くんは動じることもなく、淡々と話す。
「場所取り。俺も行きます。花見シーズンですから、どんな時間に行こうが、終日、酔っ払いの1人や2人出くわしますよ。絡まれたら、どうするんだ……って、そう言いたいんですよね? 服部先輩は」
飄々とした態度で言ってのける直江くんと、何故かしらピリついている服部くん。
よく分からない気まずい雰囲気の中で、視線をその2人の間で行き来させる。
でも、よく考えてみれば、誰かと一緒なら服部くんだって見逃してくれるかもしれない。
そうすれば、服部くんとも少しは距離を置ける。
それを繰り返せば、私の気持ちも少しづつ、少しづつ薄まっていくはず。
だから、つい先程のように安易に私のことを心配したりして、私にこれ以上、淡い期待を抱かせないほしい。
駄目なら駄目だと、今のうちに割り切って。
次に進んだ方が、よっぽど賢いや。
息を静かに吸った。
「直江くんに、一緒に行ってもらう。それなら、文句無い、よね?」
服部くんは問う私に、不服そうにしている。
「……何か、まだある?」
「……いや。じゃあ、頼むわ」
そう言われたとき、服部くんとは目が合わなくなった。
というよりも、分かりやすく逸らされた。
素っ気無くされることを、こんなに悲しいと思うなんて。
本当に面倒臭い。
彼を好きで居ることを止めようと、次に進もうと思えたはずなのに。
本当に私って奴は、面倒臭い。