わかってるよ、どうせ
会話が途切れると、彼から少し距離を置いた。
その後、2人とも黙々と作業を進めた。
気まずさを勝手に感じては、つくづく自分が嫌な奴だなぁ、と自己嫌悪に陥る。
今、目の前に居る、私が片思い中の服部くん。
そんな彼は、年下にしか興味が無いというのだから、全く嫌になる。
自分の手元ばかりに視線を落としていると、誰かに呼ばれた気がした。
その方向を振り返ると、そこには1つ年下の後輩 直江くんが、こちらに歩み寄ってくるのが見えた。
「服部先輩。清水さん、ちょっと貸してください」
「……清水は物じゃない。失礼だろ」
「そうですね、すみません。清水さん、ちょっと一緒に来てもらえませんか?」
「うん、いいよ。どうしたの?」
「こっちを少し手伝ってもらいたくて。とりあえず、来てください」
承諾して、直ぐに立ち上がったが、直江くんはなかなか動こうとしなかった。
不思議に思っていると、突然、直江くんが声を発する。
「何ですか? 怖い顔して」
直江くんを見上げて、彼の視線を追いかける。
その先は案の定、服部くんだ。
しかし、私が服部くんを見た時には、既にいつも通りの服部くんで、私と目が合うと静かに微笑み返されただけだった。