わかってるよ、どうせ



何の気遣いにしても、後輩に気を遣わせるなんて、先輩として情けない。

慌てて、微笑んでみせる。



「そ、そうだろうね、多分」

「そうですよ! 去年の夏にも高校生の子たちに来てもらって、似たような活動したじゃないですか。そのときのこと、覚えてますか?」

「もちろん。あったよね」

「そのときも、高校生の子たちに高級アイス、何故か配ってましたし!」

「うん。覚えてるよ」

「ちょっと怖いですよね、あれは」

「……確かにあれは、少しだけ引いたかも」

「ですよね。って、言いながら、私も貰っちゃったんですけどね」

「そりゃ、それは貰わなきゃ、損だよ」



一応、話には乗ってみたが、本心はそうでもない。

だって。

──私はそういうの貰ったこと、一度も無いんだよなぁ。

改めて、思い返して思う。

別に物が欲しい、とかいう図々しい気持ちではなくて、彼からそういったことをされた試しが無いので、ただただ羨ましいと思ってしまった。

でも、これは仕方の無いこと。

私が、彼より年下ではないから。

私が同い年である限り、彼からはそういうことをしたい対象としてみられることは、一生ないのだから。

< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop