わかってるよ、どうせ



その後、昼休みを終え、次の講義へ行く椿ちゃんとは別れた。

私はというと、次のコマが空き時間なので、学内の年季の入った木のベンチにて、暇を持て余す。

1人きりになると、堪えていた溜め息がとうとう溢れた。



「なんで、好きなっちゃったんだろう……」



本当に、どこで好きになっちゃったんだろう。

ぐっと考えて込んで、自身が苦しんでいる原因を探ってみる。

まず、一緒に居ると、居心地は良い。

それはきっと同じ目標に向かって、何年も一緒で、お互いのだいたいのことは理解しているから。

あと、面倒見が良いところ。

それは、彼が長男気質で、弟や妹に接する感覚で年下を可愛がるから。

今までのいろんな場面が、たくさんの彼の姿が浮かんでくる。

その中に、出ては引っ込む私の淡い感情が見え隠れして、また困ってしまう。

例えば、サークルメンバーでBBQをしたとき。

私が1人で鉄板の後片付け、手入れをしていると、声を掛けてくれたことがある。

実はこんなことは、ほぼ毎度だった。

そのときも、遠くに見える大好きなはずの後輩の輪から抜け出してまで、私のところへやって来てくれた。

本当は嬉しくて、仕様が無いのに、強がって1人でも平気だと言い張る天邪鬼な私を、いとも簡単にあしらって、傍に居続けてくれた。

だけど、本当に手伝ってくれなくても良くて。

ただ、傍に来て、気に掛けてくれただけで満足していた。

それを思い出しては、じんわりと胸が熱くなる。
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