わかってるよ、どうせ



なかなか引いてくれない、この胸の熱にうんざりした。

誰がどう見たって、片思い。

自身の顔を覆った直後、不意に頭の上から声が降ってきた。



「清水?」



見上げなくったって、相手に予想がつく。

あえて、顔を覆ったまま、黙っていても声の主が去る気配もない。

それどころか、私の座る木のベンチが少し沈んだ、気がした。



「どうした? 体調でも悪いのか?」

「ううん、大丈夫……」



顔も上げずに、返事をする。

相手にさえしなければ、呆れてどこかに行ってくれるんじゃないか、と期待しても無駄らしい。

服部くんが、動く様子はない。

──早くどこか、行ってくれないかな。

今、隣に座る彼を想っていても、叶わないと分かっているし。

だけど、それでも想ってしまうし。

想えば想うほどに、切ない気持ちが押し寄せて、もう敵わない。

もう、なんだか苦しいや。



「どうしたの? 服部くんこそ」

「特に、何があるって訳じゃないけど……清水が……」



彼にしては珍しく、歯切れの悪い調子に、つい顔を上げてしまった。

すると、おそらくずっと、こちらを見ていた彼と目が合う。

その彼の表情に、思わず身動きが取れなくなる。

彼も私を見つめ黙ったままで、言葉を続けようとしない。

いや、そもそも。

──え、何。その顔。

そのとき、偶然通り掛かった人が立ち止まる。

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