わかってるよ、どうせ
「あ! 服部、ちょうど良いところに!」
「……おう」
「あのさ! 明後日提出の、地方政策のレポート、書いた?」
「いや、まだ。あと少しで終わるけど」
「マジで? 悪いんだけど、ちょっと教えてくれねぇ? さっぱり分かんなくてさ」
「お前……前も同じこと言ってたな。自分でやろうって思わない限り、いつまで経っても出来ねぇぞ」
「今回だけ! これで最後にするから! 頼む!」
手を合わせて懇願する彼の友人と、叱る服部くんのやり取りを聞いていた。
実際、そうするしか出来なかった。
すると、服部くんは私の方を見る。
「ごめん。やっぱり何でもない。俺、行くわ」
「あ、うん」
そして、素早く立ち上がり、そのまま友人の元へ行くのかと思いきや、また私を振り返った。
「本当に体調悪いなら、無理すんなよ。清水、そういうところ、あるから」
驚く私に構わず、彼は優しく言う。
不意をつかれ、何も出来ず、固まってしまった。
それだけ言い残して去っていく服部くんには、本当にやられる。
また胸は、ぎゅうっと苦しくなるし。
それにしても。
さっきは、何を言おうとしていたのだろう。
気にならない訳はなかった。
そして、それ以上にそのときの彼の表情が、気になっている。
どうして、あんなに怖いくらいの、真剣な表情で居たんだろう。